Vector

[2002-04-03] by すす

Numeric を要素とするベクトルを扱うクラス。

使い方 Usage

Vectorクラスを使うためには、require 'matrix'する必要がある。

require 'matrix'

インスタンス生成 Instance Creation

Vector.[a]

配列aを要素とするベクトルを生成する。

Vector.elements(a, copy = true)

配列aを要素とするベクトルを生成する。 ただし、オプション引数copyが偽(false)ならば、複製を行わない。

読み出し書き込み Accessing

Vector#[i]

i番目の要素を返す。インデックスは0から開始する。

Vector#size

ベクトルの大きさを返す。

Vector#[i] = x

i番目の要素をxに変更する。

このメソッドは、matrix.rbに定義されていない。 以下に、その定義と使用例を示す。

require 'matrix'

class Vector
  def []=(i,x)
    @elements[i]=x
  end
end

v=Vector[1,2,3]
v[2]=-1
p v #=> Vector[1,2,-1]

演算 Arithmatics

Vector#* a

数aを乗じたベクトルを返す。

Vector#* m

列ベクトル(行列)に変換して(実際にはMatrix#column_vector(self)を適用)から、行列mを右から乗じた行列(Matrixクラス)を返す。

Vector#+ v

ベクトルvを加えたベクトルを返す。

Vector#- v

ベクトルvを減じたベクトルを返す。

ベクトルに対する関数 Vector Functions

Vector#inner_product(v)

ベクトルvとの内積を返す。

Vector#r

ベクトルの絶対値を返す。 ベクトルの絶対値は、各要素の2乗の和の平方根を取ったものである。

イテレータ Iterators

Vector#collect {|x| ... }
Vector#map {|x| ... }

ベクトルの各要素に対してブロックを評価した結果を、要素として持つベクトルを生成する。

Vector#each2(v) {|x,y| ... }

ベクトルの各要素と、それに対応するインデックスを持つ引数vの要素との組に対して(2引数の)ブロックを繰返し評価する。`v'はsizeメソッドと[]メソッドを持つオブジェクトである。*1

Vector#collect2(v) {|x,y| ... }

ベクトルの各要素と、それに対応するインデックスを持つ引数vの要素との組に対して(2引数の)ブロックを評価し、その結果を要素として持つ配列を生成する。

Vector#map2(v) {|x,y| ... }

ベクトルの各要素と、それに対応するインデックスを持つ引数(配列)の要素との組に対して(2引数の)ブロックを評価した結果を、要素として持つベクトルを返す。

次の例は、二つのベクトルの要素毎の積をとる。

require 'matrix'

v = Vector[2,3,5]
w = Vector[7,9,11]
z1 = v.collect2(w){|x,y| x*y } 
z2 = v.map2(w) {|x,y| x*y }

p z1 #=> [14, 27, 55]
p z2 #=> Vector[14, 27, 55]

型変換 Converting

Vector#covector

列ベクトル(行列)、すなわち、(n,1)型の行列に変換する。 実際にはMatrix#row_vector(self)を適用する。

Vector#to_a

配列(Array)に変換する

Vector#to_f

各要素を浮動小数点数(Float)に変換する

Vector#to_i

各要素を整数(Integer)に変換する

Vector#to_r

各要素を有理数(Rational)に変換する

Complexクラスとの併用 Working with Complex class

require 'complex'することによって、 Vectorオブジェクトの要素はComplexクラスに拡張される。 多くのメソッドは、この拡張されたVectorクラスでも、期待通りに動作する。

次の例は、各要素を共役複素数に置換するメソッド(Vector#conjugate)である。

require 'matrix'
require 'complex'

class Vector
  def conjugate
    collect{|e| e.conjugate }
  end
end

v1 = Vector[Complex(1,1),Complex(2,2),Complex(3,3)]
v2 = v1.conjugate
p v2 #=> Vector[Complex(1,-1),Complex(2,-2),Complex(3,-3)]
v3 = v1+v2
p v3 #=> Vector[Complex(1,0),Complex(2,0),Complex(3,0)]

しかし、Complex要素に拡張されたVectorクラスで、 期待通りに動作しないメソッドもある。 例えば、ベクトルの絶対値を求めるVector#rメソッドは、 各要素の2乗和の平方根Math#sqrtを求めるが、 このとき例外を発生させる可能性がある。

複素数を要素とするベクトルの絶対値を求めるためには、 各要素の絶対値の2乗和をとらなくてはならない(次の例 Vector#absメソッド)。

require 'matrix'
require 'complex'

class Vector
  def abs
    r=0
    @elements.each{|e| r += e.abs2 }
    Math.sqrt(r)
  end
end

v = Vector[Complex(1,1),Complex(2,2),Complex(3,3)}
p v.abs #=> 5.291502622 # Math.sqrt(28)
p v.r   #=> 'sqrt': undefined method `Rational'

ChangeLog


*1sizeメソッドと[]メソッドを持つことをもってArrayクラスの定義としてよいのでしょうか? 単純に配列クラスと書けるとうれしいです。



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