13. 非互換性と欠けている機能

さまざまなシステムにおけるmakeプログラムは、GNU makeに インプリメントされていないいくつかの機能をサポートしています。ただし、 POSIX.2標準（IEEE Standard 1003.2-1992）では、それらの機能を 必要とはしていません。

• 書式‘file((entry))’のターゲットはアーカイブファイルfile のメンバーを意味します。そのメンバーは、名前ではなく、リンカのシンボル entryを定義するオブジェクトファイルの存在によって選択されます。

  この機能はGNU makeには入れられませんでした。理由は、 アーカイブシンボルのテーブルの内部書式のせいで、makeに その知識を与える際の非モジュール性があるからです。 See section アーカイブシンボルディレクトリのアップデート.。

• ‘~’文字で終わるサフィックス（サフィックスルールで使用される）はSystem Vの makeでは特別な意味を持ち、‘~’なしのファイルに一致した SCCSファイルを参照します。たとえば、サフィックスルール‘.c~.o’は SCCSファイル‘s.n.c’からファイル‘n.o’を作成します。 全体の網羅のためには一連のサフィックスルールが必要です。 See section 古いスタイルのサフィックスルース.。

  GNU makeにおいては、この全体の一連のケースは、ルールの連鎖の汎用的 な機能の組み合わせにより、SCCSファイルからの展開に対する2つの パターンルールで処理されます。 See section 暗黙のルールの連鎖.。

• System Vのmakeにおいては、文字列‘$$@’は奇妙な意味を持ち、 複数のターゲットを持つルールの必要条件において、処理される特定のターゲットを 意味します。

  ‘$$’は通常の‘$’としてみなされるため、GNU makeではこのよう な定義がされていません。

  静的なパターンルール（see section 静的なパターンルール.）の 使用を通してこの機能の部分的なものを得ることができます。 System Vのmakeのルールの、

  $(targets): $$@.o lib.a

  は、GNU makeの静的なパターンルールでは以下のように置き換えられます。

  $(targets): %: %.o lib.a

• System Vと4.3 BSDのmakeでは、VPATHサーチ （see section 必要条件のためのディレクトリサーチ.）で 発見されるファイルはコマンド文字列で変更された名前を持ちます。しかし、 つねに自動変数を使用したほうがよりわかりやすいと思われ、この機能は 時代遅れだと思われます。
• Unixのmakeによっては、ルールの必要条件に現われる自動変数$*が、 そのルールのターゲットのフルネームに展開してしまうという驚異的な機能を 持つ場合があります。しかし、Unixのmake開発者の精神からはこれが どんな意味を持つのかわかりません。$*の通常の定義とまったく 整合性がないと感じます。
• また、Unixのmakeによっては、暗黙のルール （see section 暗黙のルールの使用.）によるサーチがコマンドの ないもの以外にもすべてのターゲットに対して行なわれるようです。これは 以下のようなことが可能という意味です。

  foo.o: cc -c foo.c

  この例では、Unixのmakeは‘foo.o’が‘foo.c’に依存していると 直感してしまうでしょう。

  このような用法は破綻すると考えられます。makeの必要条件の属性は 明確に定義されていて（少なくともGNUのmakeでは）、そのような使用法は モデルに適合しないのです。

• GNUのmakeはEFLプログラムのコンパイル、あるいはプリプロセスに対する 組み込み済みの暗黙のルールを含みませんが、EFLを使用するユーザーがいたら、 それを喜んで追加します。
• SVR4のmakeでは、サフィックスルールの指定はコマンドなしで行なわれ、 空のコマンド（see section 空のコマンドの使用.）であるかのように 扱われます。たとえば、

  .c.a:

  は、組み込み済みの‘.c.a’サフィックスルールをオーバーライドします。

  コマンドなしのルールに対しては、ターゲットに対する必要条件のリストに単純に 追加する方法が、よりわかりやすいと考えます。したがって、上記の例は、GNUの makeでは以下のように書き換えることができます。

  .c.a: ;

• makeのバージョンによっては、‘-k’ （see section プログラムのコンパイルテスト.）のない場合には ‘-e’フラグでシェルを呼び出します。‘-e’フラグは、シェルに対して 実行していたプログラムをゼロ以外のステータスを返してただちに終了するように 指示します。特別な取り扱いを必要とせず、それ自身で完結するような個々の シェルコマンド行を記述するほうがわかりやすいと思います。

この文書は新堂 安孝によって2009年9月22日にtexi2html 1.82を用いて生成されました。