12. GNU makeの機能

ここではGNU makeの機能のうち、ほかのバージョンのmakeに対する 著作表示の対比におけるサマリーを示します。makeの機能のベースは 4.2 BSDシステムであるとみなしています。もし、ポータブルなmakefileを 書こうとしている場合は、ここにあげられているmakeの機能は 使用すべきではないでしょう。 あるいは、非互換性と欠けている機能.についても同様です。

多くの機能がSystem Vのmakeのバージョンからきています。

• VPATH変数とその特殊な意味。 See section 必要条件のためのディレクトリサーチ.。 この機能は、System Vのmakeに存在します。しかし文書化されていません。 文書化は4.3 BSDのmakeで行なわれました（mimics System VのVPATHの 機能として）。
• インクルードされたmakefile。See section ほかのMakefileをインクルードする.。 単一のディレクティブによる複数ファイルのインクルードの許可はGNUによる 拡張です。
• 変数は環境変数を経由して読み込まれます。 See section 環境（変数）からの変数の取得.。
• makeの再帰的な呼び出しのために変数MAKEFLAGSを通して オプションが渡されます。 See section サブのmakeへのオプションの伝達.。
• 自動変数%はアーカイブの参照におけるメンバー名にセットされます。 See section 自動変数.。
• 自動変数$@、$*、$<、$%と$?は $(@F)と$(@D)に似た書式を持ちます。これを明らかな展開として $^に汎用化しました。See section 自動変数.。
• 変数参照の代用。 See section 変数参照の基礎.。
• コマンド行のオプション‘-b’と‘-m’は受け入れられますが、 無視されます。System Vのmakeではこれらのオプションはある動作を 行ないます。
• ‘-n’、‘-q’あるいは‘-t’が指定されていても、 変数MAKEを経由するmakeを実行するコマンドの再帰的な実行。 See section makeの再帰的用法.。
• サフィックスルールにおけるサフィックス‘.a’のサポート。 See section アーカイブファイルに対するサフィックスルール.。 この機能はGNU makeでは時代遅れです。 理由はルールの連鎖（see section 暗黙のルールの連鎖.）の 汎用的な機能がアーカイブ（see section アーカイブメンバーの ターゲットに対する暗黙のルール.）にメンバーをインストール ごとに関するパターンルールを認めるからです。
• 行の配置とコマンドにおけるバックスラッシュと改行の組み合わせは、コマンドが 出力されるときに保持されます。したがって、最初の空白の分離は別として、 makefile中にそのまま現われます。

以下の機能は、ほかのさまざまなバージョンのmakeによってもたらされました。 いくつかのケースでは、どのバージョンがどのバージョンに影響を与えたか 定かではありません。

• ‘%’を使用するパターンルール。 これはバージョンによってはインプリメントされています。誰による 発案であるかは不明ですが、これは広く普及しています。 See section パターンルールの定義と再定義.。
• ルールの連鎖と暗黙の中間ファイル。 これは、Stu Feldmanによる彼のバージョンのAT&T Eighth Edition Research Unixのmakeでインプリメントされました。その後、T&T Bell Labsの Andrew Humeのmakeプログラムでインプリメントされました。その2つから これを得たのか、あるいはわれわれ自身でそれを同時に考えたのかはわかりません。 See section 暗黙のルールの連鎖.。
• カレントのターゲットのすべての必要条件のリストを含む自動変数$^。 われわれはこれを発案しませんでしたが、誰が発案したかはわかりません。 See section 自動変数.。 自動変数$+は$^の単純な拡張です。
• what if（GNU makeでは‘-W’）は知っている限りでは、Andrew Hume によって発案されました。 See section コマンド実行の代替.。
• 同時にいくつかのことを実行する概念は多くのmakeや似たプログラムに 存在しますが、System VやBSDのインプリメンテーションでは存在しません。 See section コマンド実行.。
• パターンの代用による修正された変数の参照はSunOS 4からきています。 See section 変数参照の基礎.。SunOS 4に 対する互換性のための別のシンタックスがインプリメントされる以前に、 この機能はpatsubstファンクションでGNU makeで提供されています。 それらを誰が呼び起こしたのかはまったくわかりません。なぜなら、SunOS 4が リリースされる以前からGNU makeはpatsubstを持つからです。
• コマンド行に優先する‘+’文字の特別な意義は （see section コマンド実行の代替.）、 IEEE Standard 1003.2-1992（POSIX.2）により委任されたものです。
• 変数の値に追加する‘+=’はSunOS 4のmakeからきたものです。 See section 変数へのテキストの追加.。
• 1つのアーカイブファイルの複数のメンバーのリストに対する ‘archive(mem1 mem2…)’という書式はSunOS 4の makeからきたものです。See section ターゲットとしての アーカイブメンバー.。
• 存在しないファイルに対するエラーのないmakefileのインクルードを行なう -includeディレクティブはSunOS 4のmakeからきたものです （しかし、SunOS 4のmakeでは1つの-includeディレクティブで 複数のmakefileを指定することは許可していません）。同じような機能は SGI makeにおけるsincludeという名前で現われていて、 ほかにもあることでしょう。

残りの機能はGNU makeにおける新しい機能です。

• ‘-v’あるいは‘--version’オプションの使用によりバージョンと コピーライト情報の出力をします。
• ‘-h’あるいは‘--help’オプションの使用によりmakeの オプションの要約ができます。
• 単純展開変数。See section 変数の2つのフレーバー.。
• 再帰的なmakeの呼び出しのために変数MAKEを通してコマンド行の 変数割り当てを自動的に渡します。 See section makeの再帰的用法.。
• ‘-C’あるいは‘--directory’コマンドオプションの使用により、 ディレクトリの変更ができます。 See section オプションのサマリー.。
• defineによって同じ変数定義を作成します。 See section 変数のまったく同一の定義.。
• 特別なターゲット.PHONYによって偽のターゲットの宣言をします。

  AT&T Bell LabsのAndrew Humeは、彼のmakeプログラムのなかで異なる シンタックスで似た機能をインプリメントしました。同時に発見した例のように 思えます。See section 偽のターゲット.。

• ファンクションの呼び出しによるテキストの操作。 See section テキスト変換のためのファンクション.。
• ‘-o’あるいは‘--old-file’オプションの使用は、ファイルの修正時刻が 古いように見せかけます。 See section いくつかのファイルの再コンパイルの回避.。
• 条件文の実行。

  この機能は多くのバージョンのmakeで何度もインプリメントされました。 それは、Cプリプロセッサおよび同様なマクロ言語の機能から引き出された 自然な拡張で、革命的な概念ではありません。 See section Makefileの条件文.。

• インクルードされるmakefileに対するパスのサーチの指定。 See section ほかのMakefileをインクルードする.。
• 環境変数を用いた読み込むべき特別なmakefileの指定。 See section MAKEFILESの変数.。
• ファイル名から先行する‘./’を切り離します。その結果、‘./file’と ‘file’は同じにみなされます。
• ‘-lname’で書かれたライブラリの必要条件に対する特別なサーチ法を 使用します。 See section リンクライブラリに対するディレクトリサーチ.。
• サフィックスルール（see section 古いスタイルのサフィックスルール.） では、すべての文字の使用が可能です。ただし、makeのバージョンによっては、 ‘.’で始まり‘/’は含んではいけない場合があります。
• 変数MAKELEVELを使用する場合、makeの再帰的な使用の カレントレベルに絶えず注意をします。 See section makeの再帰的用法.。
• 変数MAKECMDGOALSのなかのコマンド行ではなんらかのゴールを与えます。 See section ゴールを指定する引数.。
• 静的なパターンルールを指定します。 See section 静的なパターンルール.。
• 選択的なvpathサーチを提供します。 See section 必要条件のためのディレクトリサーチ.。
• 計算された変数参照を提供します。 See section 変数参照の基礎.。
• makefileのアップデートにおいて、System Vのmakeは非常に限られた 書式になり、SCCSファイルに対するチェックによります。 See section Makefileの作られ方.。
• さまざまな新しい組み込み済みの暗黙のルール。 See section 暗黙のルールのカタログ.。
• 組み込み済みの変数‘MAKE_VERSION’はmakeのバージョン番号を与えます。

この文書は新堂 安孝によって2009年9月22日にtexi2html 1.82を用いて生成されました。